4月1日から、四日市私立病院でのステントの入れ替え手術のため、1週間の入院が決まっていた。
その前に、退院後の風邪も治り、少し外の空気を吸おうと妻と員弁公園に出かけた。
大きな池と豊かな緑に囲まれた公園は、3月後半の桜がもうすぐ満開になるという季節で、気分が晴れやかだった。
しかし、公園内の道がよく分からず、迷ってしまった。
池を渡る橋を進むと一本道が続き、引き返すには相当な距離を歩かなければならないことに気づいた。
妻と共に先へ進むが、休むためのベンチもなく、舗装された道は木の根がアスファルトをガタつかせており、足元に注意しながら歩かなければならなかった。
前から「こんにちは」と声をかけてくる人がいたので、どこかに繋がっていると信じて歩き続けたが、退院後の体力がまだ戻っていない私は次第に疲れてきた。
そんな私を見て、妻は「えらいとこへ連れてきてしまったな」と心配そうに言った。
どうやら池の周りを一周するコースだったようで、約2.5キロの道のりだった。
自分の体力のなさに情けなくなりつつも、2ヶ月間寝たきりだったことを思い出し、自分に言い聞かせた。
ネットで調べたところ、1週間寝たきりでも完全に歩けるようになるには相当な日数がかかると書いてあった。
ウォーキングの翌日は再び2日ほどベッドでゴロゴロして過ごした。
そして、4月1日がやってきた。この日は入院の日だ。美味しい昼食が食べられるかと少しだけ期待していた。
手術はその日の14時からと決まっており、前日の21時以降は食べ物を口にしてはいけないと言われていたので、手術前はお腹がペコペコだった。
午後から点滴が始まり、14時になると車椅子で手術室へ向かった。
手術室には大きな60インチほどのモニターがあり、緊張が高まった。
今回の手術は切開するわけではなく、口から内視鏡を入れて行うものだった。
手術前に喉を麻痺させるためのゼリーを口に含み、10分間そのままの状態を保った。
その後、ゼリーを飲み込んだが、喉の感覚がなくなっていたので、飲み込んだかどうかも分からなかった。
口にマウスピースを加えさせられ、右下に横たわるとヨダレが垂れるのが分かった。
数分後、先生が現れ、「それでは今から始めますね」と言うと、エアーを吹きかけられた瞬間、
一気に暗闇に引きずり込まれた。私は、深い眠りに落ちたのだった。